藪路木島の伝承と方言を
語り継ぐ一冊
藪路木島は、小値賀町の島のひとつ。
小値賀島の西4・8キロに浮かび、
人口がピークの1961年には184人が暮らしていましたが
時代の流れとともに人口は減り、
1972年4月に集団離村し無人となりました。
著者の古川初義さんは、藪路木島出身。
町立小値賀中藪路木分校を卒業後、島で農業や漁業を営んだ後、
68年2月、23歳で島を離れ現在は長崎市にお住まいです。
故郷である藪路木島の伝承と方言を後世に伝えるため
この本を作られました。
《本の概要》
第一部
「義民中川右右衛門翁伝」は、島民が誇りとして「四右衛門爺ヤン」と呼び
伝承してきた英雄の物語で、著者が幼少期、村の年寄衆にくりかえし教わった物語を、
島の方言を用いドラマティックに表現した一作です。
島が無人島となり、この伝承を知る人々が減る未来にも
この物語を伝えることが出来るよう執筆されました。
第二部
島の暮らしがわかる短歌を、方言を用いたものと、
用いていないものそれぞれに集録。かつての島の暮らしぶりが
目に浮かぶような暖かく力強い短歌が並びます。今もわかるわかると頷けるもの、
ユーモラスでくすっと笑えるもの、
自然と向き合うかつての厳しい暮らしに想いを馳せるものなど、
多様な表情を魅せる短歌集です。
第三部
著者の前著である「藪路木島方言集」に掲載していない方言が
約500語集録。方言の貴重な記録として大変価値ある記録です。
一冊を通し、若くして島を離れることとなった著者の、故郷を思う心と、
伝承された物語の臨場感や熱量、口伝で伝承されてきた
物語の力強さに圧倒される一冊です。登場人物や短歌の方言の部分のリズム感が心地よく、
「言葉」「方言」の美しさを再認識できます。
ぜひ御覧ください。
長崎県小値賀町藪路木島 義民中山四右衛門翁伝 方言短歌集
著者 古川初義
監修編集 前田桂子 原田走一郎
発行日 令和3年12月28日
P276